Global Type Relay: Chris Ro (Seoul ICN)

typographics t誌内では国際的タイポグラフィデザイナーを新連載として始めて、まずは英語で紹介して、同時にtypographics t オンラインで日本語で紹介します。フィーチャーされるデザイナーにはバトンリレー形式で次の方を紹介してもらいますが、1つだけの条件があります。次回は別の国の方へ。最終的にどこまで行き着くことでしょう。第二回は韓国在住デザイナー・グラフィックアーティスト、クリス・ロ氏。
[取材:ブラザトン・ダンカン、翻訳:内之倉彰]

Chris Ro(クリス・ロ)
(http://www.chrisro.kr)
ADearFriend (https://adearfriend.com/)

クリス・ロ(1976年生)。デザイナー・グラフィックアーティスト。彼の作品は、動的、空間的、詩的、僕時の雰囲気のある特性を持っている。シアトルで生まれ、カリフォルニア大学バークレー校で建築を学ぶ。建築家とデザイナーとして両方の仕事をした後、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインでグラフィックデザインを学ぶ。この混ざり合った背景は、2次元と3次元の間を行き来する彼の探求に影響を与え続けています。彼は動きや空間の概念を探求し、その概念とグラフィックデザインをより静的な表面との関係を探るのに精通しています。最近ではソウル国立大学で韓国の空間のコンセプトを探る研究を終えたばかり。彼の作品は世界中で展示されており、Victoria and Albert Museum、Musée des Arts Décoratifs、Die Neue Sammlung、National Hangeul Museumの常設展示となっています。

La Maison Du Temps  ブランディング、サイネージ、ソウル  2021

Q:前回イアンさんが、あなたの著書「もし愛せるとしたら」について述べていましたが、教えて頂けますか?

このプロジェクトに限らず、今日に至るまで、私は「擬人化」という概念に一種の好奇心を抱いています。ほとんど生命体のようになるのです。特にこのプロジェクトでは、あらゆるものの中で、文字/タイポグラフィがそのような特性を持つことができるかどうかに興味がありました。特に美しい文字は、ある種のナルシスト的な性質を持つことができるのか、もしそうだとしたら、どのようにして自分自身を愛することができるのか、ということに興味がありました。今こうして書いてみると、この考えがいかに奇妙なものであるかがわかります。でも、当時の私はそんなことを真剣に考えていました。

壁画/グラフィック for Vans x Worksout, ソウル  5.8 x 7メートル  コンクリート、油絵 2021

Q:デザイン/タイポグラフィを始めたきっかけは何ですか?

子供の頃、アメリカでたくさんの視覚文化に囲まれており、ほとんどが物を売るためのものでした。この時期のスケートボード・グラフィックをはっきりと覚えていて、グラフィックや企業が作り出す世界に魅了さ、とてもカッコよくすべてが好きでした。そして、これがグラフィックデザインと知る前から、自分はこの仕事が好きだと思っていました。

Two Sounds (二つの音) インストレーション/RYSE Hotelの壁画グラフィック、ソウル
1800cm x 160cm アルミ, プラスチック, LED  無酸ウルトラバイオレット印刷  2021

Q:ADearFriendでは、タイポグラフィが作品の中で重要な位置を占めているようですが、その理由は何ですか?

文字はアイデアを正確に伝えることができるだけでなく、たくさんの雰囲気を伝えることができるという点でとても特別なものだと思いますし、私の一番好きなところだと思います。文字を大切にしているからこそ醸し出すことができる、あの気持ち、あの雰囲気なのです。

Peles Empire, Even Here I Exist  イベントブランディング, カタログデザイン  2020

Q:韓国に住み・働いていますが、ウェブサイトは英語ですね。その理由は何ですか?

私は韓国系アメリカ人、つまり韓国人の血を引いていますが、アメリカで生まれ育ちました。多くの移民がそうであるように、ある種の空虚感が常に何年にもわたって残ります。2009年に私は20数年ぶりに韓国を訪れる機会があり、私はこの国を経験しなければ、知らなかったことを一生後悔することになると思いました。厳密に言えば私は今海外にいますが、この11年間はとても貴重な時間だったと思います。この期間に学んだことは授業料では足りないくらいです。私の心は満たされました。

ウィンターモウニング(冬の喪)  ポスターデザイン  2021

Q:「デジタル・クラフトマンシップ」や「フロー」についての研究を教えていただけますか?

「フロー」とは、ミハイ・チクセントミハイが提唱した概念です。振り返ってみると、私の人生におけるすべての決断は、知ってか知らずか、この概念に基づいて行われていたように思います。「フロー」とは、ある種の没入感のある状態です。お腹も空いていないし、時間のことも考えていないし、自分がやっている作業以外のことは何も考えていない。そして私の場合、制作しているときはフロー状態にあります。そして、私にとって世界で最も幸せな時間です。私のキャリアの選択や決断も、もし「フロー」を感じられなければ、何をしていてもやめて再び「フロー」を見つけるために別の場所に行くのです。「デジタル・クラフトマンシップ」は、この「フロー」の概念に直結しています。私はコンピューターを楽器のようなものだと考えています。深く入り込み、ある時点で音や音楽を作るように自分を表現することができるもの。より深く、直感的に表現することができます。そこで私は、コンピューターやコンピューター・プロセスとの間に、どのようにしてそのようなつながりを作り出すことができるのかに興味を持ちました。今では、「クラフトマンシップ」という概念にはあまり興味がなく、コンピューターのプロセスを人間的にすることができるポイントを探すことに興味があります。

ベネチア・ビエンナーレ 2021, 韓国パビリオン  展示ブランディング, グラフィックデザイン  2021

Q: 弘益大学(ソウル市内)でのタイポグラフィの授業について教えてください。(例:学生にどのようなことを教えていますか?)

タイポグラフィの授業では、実社会で生きていくために必要だと思われること、そしてできれば楽しい時間を過ごすために必要なことをほぼ網羅しています。マクロとミクロの両方のタイポグラフィの側面をカバーしていますが、私は常にどの時点で「フロー」に乗り、楽しみ、深く入り、表現力を高め、新しいことに挑戦できるか、などを示したいと思っています。例えば、ボディテキストやエディトリアルデザインの仕事は、とても彫刻的なプロセスだと考えています。この彫刻的な側面について理解すれば、このプロセスは非常に楽しくなり、フローに入ることができるのです。簡単にです。私は、表現力豊かなタイポグラフィ、レタリング、キネティック・タイポグラフィなども教えようとしています。動きがあって美しければ、簡単にフローに入ることができます。1日に8時間も10時間も何かをしなければならないのであれば、楽しむ方法を見つけなければ、本当にそれをする意味がありません。時計を見ながらランチタイムを待っているような人は、自分がやっていることを楽しめていないのです。


次回 ICN→SYD: Mark Gowing (Sydney)

マーク・ゴウイングは、オーストラリアを拠点に活動するデザイナー、アーティスト、出版者です。彼の作品もクライアントの仕事も、いずれも何らかの形で文字から始まります。彼の作品は、よく見ると抽象的な形が実に美しく細工され考え抜かれたレターフォームです。この造形が多くのクライアントワークにも反映されています。

記事作成者
BrothertonDuncan
BrothertonDuncanの顔写真
オーストラリア出身で、2001年より日本に在住し、GRAPHIC DESIGNER+THINKER+WRITERとして活動しています。デザイン以外にも英訳の仕事を受ける。大阪医科薬科大学と京都芸術大学でデザイン専門英語、奈良芸術短期大学で編集デザインを担当。2011年に入会、現在は西部研究会委員会の担当理事。クラフトビール好き。最近新しいチェーンソー購入。普段、母国語より関西弁しゃべっている。