typographics t誌内では国際的タイポグラフィデザイナーを連載として始めて、まずは英語で紹介して、同時にtypographics t オンラインで日本語で紹介します。特集されるデザイナーにはバトンリレー形式で次の方を紹介してもらいますが、1つだけ条件があります。次回は別の国の方へ。最終的にどこまで行き着くことでしょう。第5回はイタリア・リミニ市在住タイポグラフィデザイナー、レオナルド・ソンノーリ氏。
[取材:ブラザトン・ダンカン、翻訳:ブラザトン・ダンカン、内之倉彰]
Leonardo Sonnoli (レオナード・ソンノリ)
(https://www.sonnoli.com/)
Instagram: Leonardo Sonnoli
1962年、トリエステ(イタリア北東部)生まれ。主に公共団体やあらゆる規模の民間企業のビジュアル・アイデンティティを手掛ける。現在、ウルビーノ市のISIA(Istituto Superiore per le Industrie Artistiche)で教鞭をとり、イタリア国内外で自身の活動に関するワークショップやレクチャーを定期的に開催。ソンノリ氏のデザインは多くの国際的なパブリックコレクションに保管され、いくつかの名誉ある賞を受賞。リミニ市在住で自身の事務所「Studio Leonardo Sonnoli」を運営している。
Q:ポール・マクニール氏(前号掲載)とは以前に会ったことがありますか?
ポールさんとは直接会ったことはありません。ただお互いの作品が目に止まり、手紙のやりとりが始まってポスターや本送り合うようになったのです。
Q: スタジオを開く前は、どこで勉強し仕事をしていましたか?その過程で得た最も重要な原則は何だったのでしょうか?
イタリアのウルビーノ市にあるISIAで学びました。その後、トリエステ市の小さなスタジオ「Tassinari/Vetta」でインターンとして働き始め、そこで8歳年上の恩師であり親友でもあるピエールパオロ・ヴェッタ(1955-2003)に出会いました。彼からデザイン史の知識がいかに重要であるか、そしてそれがデザインツールとしていかに活用できるかを学びました。アートディレクターとして別の事務所で長年働いた後、2016年まで「Pierpaolo」事務所のパートナーになり、2017年に自分の事務所を開設しました。
Q:タイポグラフィに対する愛はどこから来るのでしょうか?クライアントワークばかりなのか、それとも自分主導のプロジェクトもあるのでしょうか?
私はイラストレーターとしては下手です。でも、20世紀のヨーロッパのアバンギャルドを勉強した際、アルファベットにさまざまな意味づけをしたり形を変えたりすることで、言葉だけを使って視覚的にコミュニケーションすることができることを発見したんです。自分主導のプロジェクトをほとんど展開しませんが、クライアントワークと実験的な作品に違いはありません。どの作品も、何か新しいことや違うことをするきっかけになる可能性を秘めています。
Q:著書の『ビブリオグラマ』についてお聞きしたいです。
非常に古い自作自演のプロジェクトです。ビブリオグラマは、26冊の参考書(アルファベット1文字につき1冊)のチャートを通して、私の出典を説明するマニフェストのようなものです。私の人生地図がデザインされるきっかけとなった私の足跡や、タイポグラフィの分野で重要なことを教えてくれた人々のリストなど、空間や時間の距離を越えても、提案する目録というよりはむしろセンチメンタル的な本棚のようなものです。
Q:ISIAで教えている内容について教えてください。また、若い世代の学生たちに対してどのような印象をお持ちですか?
ISIAではエディトリアルデザイン修士課程の指導をしています。私の授業で、学生達は本を3冊デザインしなければなりません。そのうちの1冊は、20世紀のイタリアにおけるエディトリアルデザインの歴史について研究することから始まります。残念ながら近年の学生たちの知識はソーシャルネットワークのアルゴリズムに依存することが多くなっています。問題はそこで何を見つけるかではなく、発見されたコンテンツに対する批評が欠けている、そして画面上で見るすべてのものが「平ら」なのです。
Q:リミニ市でタイポグラフィが好きな人にお勧めの場所を教えてください。
数年前、私はロンドンを拠点とする会社が月に一度企画するリミニのツアーでタイポグラフィのガイドを務めました。第2次世界大戦中、リミニの85%は爆撃で破壊されてしまったので不思議な感じがしますが、それでもローマ時代のアーチや1世紀に建てられた橋、ルネッサンス建築の傑作のひとつであるマラテスティアーノ神殿(1450年)などが残っています。その神殿はローマ文字をはじめてデザインしたレオン・バッティスタ・アルベルティが設計したもので、17~18世紀の興味深い文字が刻まれています。さらにリミニはビーチが有名で、夏休みになるとビーチの係員たちが筆やタイルを使って作ったヴァナキュラー(手書き)レタリングの例をたくさん見ることができます。
次回 RMI→LHR: Tony Brook (London)
次回は、レオナルドさんからサウスロンドンにあるデザイン事務所「SPIN」を運営しているのトニー・ブルックさんをご紹介いただきます。
「トニーとは同じAGIに所属していることから知り合いました。彼が編集した本『Studio Culture』の一部に私は参加し、ロンドンで開催された「Wim Crouwel」展はトニーがキュレーションしてオープニングで会いました。イタリアのウルビーノ市のISIAで講義を行うよう招待したこともあります。最後に会ったときは、キャサリン・グリフィス氏(ニュージーランドのタイポグラフィックデザイナー)と一緒に家の近くのビーチで魚を食べました。トニーと私は、グラフィックデザインの歴史において同じようなものを評価しており、その知識は私たちのデザインにかなり深い影響を与えています。」