Global Type Relay: Tony Brook (London LHR)

typographics t誌内では国際的タイポグラフィデザイナーを連載として始めて、まずは英語で紹介して、同時にtypographics t オンラインで日本語で紹介します。特集されるデザイナーにはバトンリレー形式で次の方を紹介してもらいますが、1つだけ条件があります。次回は別の国の方へ。最終的にどこまで行き着くことでしょう。第6回はロンドン市在住クリエーティブ・ダイレクター、トニー・ブルック氏。
[取材:ブラザトン・ダンカン、翻訳:ブラザトン・ダンカン、内之倉彰]

Tony Brook (トニー・ブルック)
Spin (https://spin.co.uk/)

1992年に設立されたデザイン事務所、SPINのクリエイティブ・ディレクター。豊富なポートフォリオかつ、30年以上にわたって蓄積された幅広いクリエイティブワークに加え、SPINは自ら立ち上げた多数のクリエイティブプロジェクトやアートとデザインの境界線のない展覧会を数多く手がけています。また、自社レーベル「Unit Editions」を運営、デザイナーがデザイナーのためにつくり、洞察力に満ちた文章を収めた書籍を出版しています。トニーは余暇をアート制作に費やし、パートナーのトリッシュとロンドンの緑豊かな場所を散歩したり、クリエイティブスペースとして使っている田舎のコテージに過ごしたりしています。

ジュンヤ ワタナベ/コムデギャルソン。ワタナベ氏の周りにある本からインスピレーションを受け、SPINがデザインした様々なタイトルを取り入れている。

Q:トニー・ブルックとSPINは同じですか?何か特別な方法で切り離し/区別しているのでしょうか?

まずは、レオナルドからバトンを渡してくれたことに感謝します。彼は素晴らしいデザイナーなので、推薦してくれたことをとても光栄に思います。
もちろんSPINは私ですし、すべてが私の仕事です。しかし私一人でと言うには、かなり違いがあります。SPINは心底努力する集団です。少数かつ結束の強いチームで、我々のスタイルは各メンバーが全体に貢献することを重視しています。大変な作業ですが同時に励みにもなります。
私が全体的なリーダーシップを取っていることが多いのですが、全員が個々に大きな責任を担っており(求められていることに応じて)様々な場面でリーダーシップを発揮しています。流動的で変化に富んだ組織であり、プロジェクトに対して全員が何らかの意見を出さないことは、まずありません。
我々の仕事はクライアントとの強い絆に支えられながら、常に迅速な対応を心がけています。プロジェクトに対するアプローチは協同的で、常に会話と一定のリサーチによって成り立っています。

Q:SPINのウェブサイトには、『有機的な視覚言語を生み出し、アートプロジェクトにデザインの刺激を与え、タイポグラフィから文字を取り除き、新しい表情を与える。』と書かれていますね。

SPINのアート、特に私の関心について少しお話したいと思います。これはデザインブリーフの過程で出てきたテーマに取り組みたいという欲から発生し、時間をかけて進化してきました。アートは痒いところに手が届くようなものと思っています。私の中ではアートとデザインに違いはなく、両者は互いに影響し合って、実験から発展することが多く、デザインとアートの中心は意図なのです。

Aircord。東京を拠点に活動する、クリエイティブな世界を切り開くスタジオのアイデンティティ。
このレタリングは、スタジオの作品が持つ近未来的な性質を表現している。

Q:「文字に新しい表情を与える」ことについて詳しく教えてください。

この事について、我々が作るものをより正確に表現するならば「レタリング」かもしれませんが、本当に細かい事にこだわることなのです。読みやすさや形に挑戦するプロセスの一環として、実験的な活字を作ることが多いのですが、それは我々にとって自然な探求であり、デジタルとアナログの組み合わせによって、非常におもしろい結果に行き着くことがあります。

Q:SPINはデザインの仕事だけでなく、アートも多く手がけていますね!それはなぜですか?

我々は常に実験的でありSPINのDNAとして不可欠な部分です。すべてのアートはポジティブで、このマインドセットからは3つの結果が考えられます。1.実験がプロジェクトの中で意味を持ち、2.あるものは作品に発展し、3.結果は実験的なままである。どのような結果であっても、決して時間の無駄にはならず、結果はすべてポジティブな学びにつながります。

Plural。ユニークな投資プラットフォームのためのアイデンティティ。
変化そして進化し続けるアイデンティティは、Pluralという会社の先鋭的な性質に結びついている。

Q:クライアントを選んだりしますか?

クライアントが我々の仕事を気に入ってくれて、意見を聞きたいと思って依頼してきたという前提で、プロジェクトにポジティブな視点で取り組むことが多いですね。ごく稀に、クライアントが私たちの意見に興味がない場合もありますが、その場合は私たちは仕事を選びます。

Q:クライアントワークと自主的なプロジェクトのバランスはどのように取っていますか?

バランスに関して言えば、週の中で自主制作をする時間を確保しており、そうでもしないと実現しません。時には忙しさのあまり自主制作プロジェクトを先延ばしにしてしまうこともありますが、アウトプットの大切な一部としています。そうすることで制作が進み、決してつまらないものになることはありません。

U ME U。カリフォルニアのホームウェアブランドのアイデンティティと掛け布のデザイン。抽象性と文字の視認性を追求する現在進行中のアートプロジェクトから生まれた。

Q:ご自身のまたはSPINが最近行ったプロジェクトで、自慢できるものがあれば教えてください。

慢心は失敗のもとと思っています。昔のプロジェクトにこだわらず、作ったプロジェクトに対し熱くなったり冷めたりします。作っている最中はとてもワクワクして熱中するのですが、その後はそれほどでもなくなってしまうのです。時間が経てば気持ちも落ち着き、満足できるものもあるかもしれませんが、それがどれかを認めたくありません。

MUBI。映画「Crimes of the future(未来の犯罪)」のポスターとキャンペーン。

Q:Unit Editionsと出版に対する姿勢を教えてください。

一言で言えば「デザイナーによる、デザイナーのための本」です。ユニットが設立されたのは、当時、メジャーな出版社から出版される多くの本を見て、大切な事が語られておらず、あまり価値がないと感じました。時代遅れのやり方や前提で、妥協した内容でした。
テムズ&ハドソンがUnit Editionsの出版名を持っていますが、強いデザインストーリー、優れたデザインの本、優れた文章の本とのバランスを取り続けることを望んでいます。そしてこのバランスによって、私たちの本が手頃な価格で世界中の多くの読者に読まれるようになると思いたいです。

出版レーベル「Unit Editions」。ポーラ・シェアの作品集。レタリングはシェア氏の環境グラフィックへの関心から生まれている。

Q:タイポグラフィ好きな方に、ロンドンのおすすめの場所を教えてください。

ブリクストン・マーケットは昼でも夜でも楽しめますし、ポップ・ブリクストンもそうです(隣り合っているので、両方訪れてもいいでしょう)。トゥーティング・ブロードウェイ・マーケットも個人的に好きな場所です。少し人里離れた場所にありますが、五感を刺激する場所です。ご注意:トゥーティングとブロードウェイの2つがあり、両方見ることをお勧めします。


次回 LHR→STR: Andreas Uebele (Stuttgart, Germany)

次回は、トニーはドイツのアンドレアス・ウエベレにバトンを渡しました。

「アンドレアスの作品をUnit Editionsから出版しました。彼は常に表現力豊かで先進的なデザイン作品を作ってきました。思慮深く、知的なデザイナーで、次号のタイポグラフィックスtにぴったりだと思います。」

記事作成者
BrothertonDuncan
BrothertonDuncanの顔写真
オーストラリア出身で、2001年より日本に在住し、GRAPHIC DESIGNER+THINKER+WRITERとして活動しています。デザイン以外にも英訳の仕事を受ける。大阪医科薬科大学と京都芸術大学でデザイン専門英語、奈良芸術短期大学で編集デザインを担当。2011年に入会、現在は西部研究会委員会の担当理事。クラフトビール好き。最近新しいチェーンソー購入。普段、母国語より関西弁しゃべっている。